ささき動物病院

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イヌの消化器系の病気について (口と歯について)消化器系

歯の機能について説明します。

切歯: 毛づくろいや、細かい剥離などをする。 上6本、下6本
犬歯: くわえたり、裂く行為をする。 上2本、下2本
前臼歯、後臼歯: ちぎる行為や、砕く行為。 前臼歯 上8本、下8本
後臼歯 上4本 下6本
人との違い: 歯根が人より深く、長い構造をしている。

歯は、生後約3週齢から乳歯が生え始めます。生後3ヶ月齢ぐらいから切歯から抜けはじめ歯根は溶解し、永久歯の生える容積をつくります。7ヶ月齢になり、永久歯が揃います。但し、後臼歯は乳歯がなく、6ヶ月ぐらいから生えてきます。

この過程で発症しやすい症例として、乳歯残存による障害です。
トイ犬種など歯根吸収が起きず、乳歯歯根が残ってしまい永久歯の生えるのを妨げ、歯が二重になり、不正咬合の原因となります。また歯垢も溜まり、口臭の原因にもなります。
口腔の症例について、継続してお話していきます。

イヌの消化器系の病気について (食道の症例について4)消化器系

食道の病的な現象として吐出があります。時間をかけて消化された食べ物を吐き出す嘔吐とは異なり、短時間に、嗚咽もなく食べ物を反射的に出してしまいます。
吐出と嘔吐をしっかり鑑別することで、食道疾患、もしくは胃疾患なのか、わかります。

急性の吐出しては、異物による完全閉塞。異物は通過、または排出したが、異物が食道壁に炎症を起こし、粘膜が肥厚して二次性の不完全閉塞を起こした場合。または食道炎。

慢性の吐出は、持続的に徐々に発症するもので、食道の拡張です。巨大食道症と言われます。筋肉無力症や、神経毒(ウイルス、細菌)が原因といわれます。

愛犬が、立位(四肢で立って)で頭から低い位置で自由に飲食できることに、飼い主はあまり気がつかないかも知れません。食道の筋肉壁は柔軟で、粘液を分泌し規則的な蠕動運動により胃に食物が送られます。重力に逆らって飲食してるようなものです。
よって、吐出は極めて犬として非生理的な現象なのです。

次回は、胃の症例についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (胃の症例について6)消化器系

胃の症例について:検査から診断できる症例について

まず、急性胃炎と慢性胃炎に分けられます。
症状として嘔吐がみられますが、主に、異物摂取や中毒、細菌、ウイルス、化学物質、食物過敏症などが原因ですが、急性、慢性の判断は嘔吐する期間にて判断します。長期にわたり継続する場合は、慢性と判断します。
診断は、レントゲン、超音波、血液検査、内視鏡、バリウム検査、試験開腹などです。

レントゲン検査
胃内異物の有無。(石や金属類は把握できますが、紙、繊維などはX線を透過するので捕捉できない。)ガスの貯留。(急性の胃拡張、胃捻転、胃閉塞などがわかる。)胃潰瘍。(胃の壁面の状態による。)
超音波検査
胃潰瘍。(ステロイド剤、抗炎症剤、肥満細胞腫、が原因。)
血液検査
白血球の数、種類により、胃炎の症状の進行度がわかります。(寄生虫や、食物アレルギーにより、白血球の好酸球数が上昇する。)
内視鏡検査
異物、肥満細胞腫による胃潰瘍、腫瘍、ポリープなどが確認できます。
バリウム検査
レントゲン撮影を併用することにより、X線を透過してしまう異物や、腫瘍の範囲、腫瘍、ポリープを確認できます。
試験開腹
いずれの検査でも診断がつかない場合。最終手段とします。

次回は下部消化器の腸についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (胃の症例について5)消化器系

胃の病気は、急性胃炎と慢性胃炎に分類できます。

急性胃炎の定義として、普段の様子から急変し、症状として短期間の間に嘔吐の頻度が多くなります。慢性胃炎は、その嘔吐する期間が継続し、長引く傾向になります。
胃炎は、嘔吐が主症状であり、愛犬家にとって、もっとも気がかりで、心配になる病気のひとつでもあります。また、犬にとっては、生体を守る最大の防御反応ともいえます。
摂取した異物、毒物、であれば嘔吐することにより、消化される以前に排泄されることになります。ただ、不完全なことが多く、動物医療により救済されるわけです。
嘔吐物により、病因が推測されます。形態、色、におい、未消化物の確認により、消化管の病変部が推測できます。また、胃液状、胆汁状の嘔吐により、上部消化管(胃より上)下部消化管(十二指腸以下)の病変か予測できます。

次回は嘔吐の原因として、胃疾患の症例を検討してみます。
また、嘔吐物は、胃炎診断の材料となりますので、動物病院に密閉して持参しましょう。

イヌの消化器系の病気について (咽喉の症例について4)消化器系

咽喉、すなわち体内に通じる消化器系の入り口について説明いたします。
解剖学上、呼吸器系の鼻咽頭と、分かれている部位でもあります。
咽喉の症例として、

咽頭炎(のどの腫れ) 呼吸器系から埃、排気ガス、煙、刺激性の強い揮発性ガスの侵入。細菌、ウイルスによる感染症により発熱、咳、くしゃみなどの症状を呈します。
都市部の産業道路幹線で飼育されていた愛犬では、咽頭炎を初期症状として、塵肺症様の症例が確認されたことがあります。また、気密性の高いガレージにいた愛犬が揮発性ガスを持続的に吸引して吐き気、過剰なよだれを起こし、痛みを伴う咽頭炎を発症した症例があります。
扁桃腺炎 咽頭や、呼吸器系の感染症の症状として扁桃腺が腫れます。発熱、食欲低下や、吐き気なども認められます。リンパ腫なども併発していることもあります。

治療について
非ステロイド系の消炎鎮痛剤や、抗生物質などを投与します。

次回は、食べ物の通過する食道についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (口腔の症例について3消化器系

口の周囲の疾患として、唇の炎症などがあります。
唇の炎症は、アレルギー、細菌の感染、真菌(カビ類)、顔ダニ(毛包虫)、免疫疾患、などの原因により、炎症を起こします。

構造的に、唇のひだが、垂れている犬種(バセットハウンド、アイリッシュセッター、アメリカンコッカースパニエル、セントバーナード等)は下唇に大きなひだがあり、食事のカスなどが溜まって細菌の過剰増殖がおこり、炎症が起こることがあります。
犬種の特性をしっかり把握し、常に口周りは清潔にすることと、唇の炎症の原因は、多様ですので、基礎疾患を見極めることが大切です。唇だけに限局しているのか(原発性)、他の皮膚病との関連、若しくは、免疫疾患の延長線上にあるのか(汎発性)、かかりつけの獣医師と、相談し診断します。
外傷、異物の刺入、やけどなどは早期治療が必要です。早急に獣医師の治療が必要です。
また、過度なよだれは、痛みを伴い、持続的な刺激がある可能性が、高いものです。特に舌(舌根部:舌の根元)に絡みついた糸などは、外見上、よだれを多く流し、唇内外の障害と判断しがちです。唇と口腔内の疾患の鑑別は重要です。

次回は、口腔の軟部組織、咽喉(のど)についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (口腔の症例について2)消化器系

口腔内の疾患として、いくつかの症例を列挙します。

歯根膿瘍
犬歯や上顎の前臼歯に発生しやすく、熱や痛みがあります。
目の下が腫れ上がり、やがて膿が出るようになります。
抜歯、歯管治療(歯の内腔を除去し充填剤を入れる)、抗生剤の投与で治療。
歯の破損
歯が折れたりすること。抜歯、歯管治療をします。
不正咬合
アンダーショットは、上顎が下顎に対して短いことです。短頭種に関しては、正常とみなされる場合があります。
オーバーショットは上顎が下顎に対して過長なことです。
噛み合わせが悪く歯肉に干渉するなら、抜歯します。
乳歯の残り
永久歯との干渉があり、不正咬合になります。食べかすも詰まり、歯肉炎や歯周病の原因になります。抜歯して治療します。
歯肉の過形成
高齢犬、あるいは短頭種の高齢犬に見られます。口腔内の歯肉組織が歯を覆うようにして増殖します。レーザーで腫れを抑制したり、電気メスで切除することもあります。

次回は、口腔や、その周囲、咽喉など軟部組織についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (口腔の症例について1)消化器系

口腔内の疾患として歯周病があります。
<歯周病>歯の構造として、深部に歯周靭帯があり歯槽骨を固定しています。また、歯周ポケットがあり、1〜2ミリの深さがあります。その周辺構造が、炎症をおこすことです。
重症になれば、ろう孔(化膿した管)を形成し鼻まで炎症をおこします。

原因:
歯石が沈着し、細菌感染をおこすことです。歯槽骨の不安定を招き、歯周靭帯のゆるみが発生し歯自体が脱落します。
予防:
歯磨きは、歯肉と歯槽の間のマッサージ、硬質ゴム製の適度な大きさのおもちゃを噛ませる。犬用の歯磨きで週1回磨く。
治療:
堆積した歯石はスケーラー(金属振動による破砕)によって取り除き、発熱によるエナメル質の障害を防ぐため水流をかけます。また再度、歯垢が着きにくくする為、研磨をします。炎症を起こした歯周ポケットは、抗菌剤入りの軟膏を注入し、歯根の炎症や、動揺を抑止します。それ以降は予防を心がけます。場合により抜歯、フラップ形成術により治療します。

次回も口腔症例をお話していきます。

イヌの嘔吐について消化器系

愛犬が食べ物を吐くことは、胃が食物を受け付けない現象。あるいは、消化器系、内臓系感染症(ウイルス、細菌)、中毒などの病気のサインでもあります。

胃腸など消化器管に異常がある場合。たとえば、異物を飲み込んで胃を刺激する。おおきな異物であれば、(ボール、石ころ、大きく硬い毛玉)などは、腸に移動し閉塞をおこし、腸閉塞。閉塞があれば、嘔吐が継続し症状が悪化します。手術が必要とされます。腸重責(腸が入り込んでしまう)などは、緊急の手術を施します。
感染症では、パルボウイルスなどは激しい嘔吐と下血をおこします。病原性細菌感染でも、嘔吐はよく見られます。嘔吐は、ある意味で体の防御反応でもあり、一過性に終わる場合がありますが、激しく嘔吐したり、血液やタール状のようなものが含まれたりした場合、嘔吐が持続したときは、重篤な病気のサインと考えます。
肝臓の病気では、肝炎、胆道疾患などで、嘔吐します。特に胆道閉塞は、胆汁色の嘔吐物がみられます。腎臓の病気では腎不全において、急性、慢性に限らず、嘔吐がみられます。これは、腎臓機能低下により血中窒素が上昇し、胃腸粘膜を刺激し嘔吐を誘引します。膵臓の病気では、腹部の激しい痛みとともに、嘔吐を伴います。

いずれにせよ、嘔吐は脱水と体液の電解質異常により、心臓に負担をかけることもあります。隠れていた病気も顕著になることもあります。
いずれにせよ、持続する嘔吐で、症状が著しいものは、獣医師の診断が必要になります。迷わずかかりつけの動物病院で相談しましょう。