ささき動物病院

電話番号
〒259-0123 神奈川県中郡二宮町二宮1269-10

コラム

ホーム > コラム

カテゴリ一覧
カテゴリ一覧

イヌの消化器系の病気について (下部消化器5)消化器系

下部消化器のウイルス性下痢疾患の診断と治療について述べていきます。

1:ウイルス性下痢の診断

パルボ、ジステンパーはウイルスの検出をすることにより確認されます。
排便中にウイルス抗原(ウイルスそのもの)を検出します。ジステンパーは鼻汁、唾液、結膜でも確認できます。これは感染初期に確認されます。

<血中のウイルス抗体価の測定>
ウイルスが体内に侵入し、そのウイルスに特定した免疫が反応することにより(抗体価の上昇)感染が確認されます。パルボ、ジステンパー、アデノ、パラインフルエンザ等。
ただし、抗体の由来も、移行抗体(母犬から譲り受けた免疫)、ワクチン抗体(ワクチン接 種によって得られた免疫)、感染抗体(感染時に反応した免疫)、等がありますので、臨床症状や、ワクチン接種の有無、抗体価の上昇度による組み合わせで判断します。
また、IgM、IgG、(体内免疫蛋白)を定量、測定、両者を比較することにより感染時期を特定することができます。抗体価との組み合わせは、より診断精度を高めます。
IgMが存在することにより、初期感染と判断されます。ただし、ワクチン未接種、接種2ヶ月以上の場合です。
IgGは感染後、10日から上昇、1ヶ月でピーク。半年間持続します。ただし、2−3ヶ月齢仔犬では、移行抗体(母犬からの譲り受けた免疫)の可能性もありますので存在自体が感染とは限りません。
これらの診断は混合ワクチン接種の効力を確認するために応用されることもあります。治療は、輸液(電解質補正、細胞外液の調整)、インターフェロン投与、血漿輸液、等などです。

次回も引き続き各論とします。

犬の消化器系の病気について (下部消化器4)消化器系

下部消化器の下痢疾患で代表的なものを述べていきます。

  1. ウイルス性(パルボ。ジステンパー。コロナ。)コロナウイルスは、パルボと同時感染すると、症状を憎悪させます。
  2. 細菌性(ぶどう球菌。パスツレラ。連鎖球菌。)クロストリジウムは毒素による障害があります。サルモネラ、カンピロバクターなど。
  3. 出血性(細菌毒によるもの。)小型犬に多い。ミニチュアシュナウザー、ミニチュアプ−ドル、ダックスフントなど。
  4. 食物アレルギー(消化器症状と皮膚炎を併発。)下痢のほか、嘔吐、腹痛、体重減少、皮膚炎と同時に外耳炎。
  5. 吸収不良性症候群(消化不全、吸収不全。)小腸の機能不全、すい臓の酵素分泌不能により栄養素が吸収できない疾患です。
  6. 炎症性(腸の粘膜炎症。)腸粘膜の免疫障害により炎症がおこり吸収不良が起こります。
  7. 蛋白喪失性(たんぱく質の吸収不良。)小腸の蛋白吸収ができず、蛋白質が腸管内に漏れてしまい、腹水や皮下浮腫を起こします。
  8. 寄生虫(回虫、鞭虫、原虫。)子犬などに、散見されます。
  9. 拾い食い(異物摂取)


次回は、各種疾患について説明していきます。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器3)消化器系

下痢は愛犬家がもっとも遭遇する病気の一つと思われます。
下痢便の状態により、原因や疾患もある程度予測され下痢便の軟度、色、回数と量、愛犬の症状により判断していきます。

水様性のものは、食物の腸の通過時間が早く、蠕動、振り子運動が正常ではないことがわかります。どろどろとした便では腸粘膜の剥離が起きています。
油状であれば吸収不全。泡状は病原性細菌の増殖を疑います。タール状、黒色便は、小腸、もしくは胃から出血。鮮血は大腸、肛門から出血。薄い色は胆汁分泌が不完全である場合。

粘土状は、消化吸収が低下した場合で、膵臓からの酵素分泌低下を疑います。
回数が多く少量の便を多く排泄するのが、結腸、大腸性下痢。比較的多くの便を数回にわけて排泄するのは小腸性下痢。臭いがきついのは、細菌過剰増殖。愛犬が体重減少するの場合は吸収不良。食欲は変わらないが、下痢であれば結腸、大腸の疾患と思われます。

次回は、各種疾患について説明していきます。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器2)消化器系

下部消化器系の症状として、いくつか挙げられます。

一般に下痢、便秘、メレナ(黒色タール便)、排便のりきみや、疼痛。げっぷや、腹囲の膨大(腸内のガス産生)、肛門周囲の病変(出血、こすりつけ)、排便失禁などです。
診断には、身体検査、レントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査、生化学検査、血液検査糞便検査、などがあります。重要なのは問診、触診、便の状態です。

まず、飼い主さんが、最初の情報として発症時期、経過をしっかり把握することでしょう。
下痢の治療に関しては、脱水を補うことが重要です。点滴により、体細胞内外液の代謝イオンを正常に戻すことで、代謝性アシドーシスによる虚脱や血液循環障害を防ぎます。
症状の程度、原因により治療方針は変化しますが、支持療法として点滴が有効です。

次回は下痢の原因や各種疾患について説明していきます。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器1)消化器系

下部消化器は、小腸:十二指腸、空腸、回腸、大腸:盲腸、横行結腸、下行結腸、直腸、肛門と解剖学的に分類できます。大きく分けて小腸、大腸で構成しています。

小腸は消化酵素によって脂質やたんぱく質を分解し、小腸粘膜の絨毛によって、より低分子栄養(脂肪酸、アミノ酸、糖類)を吸収します。(消化酵素は、膵臓、肝臓に由来)

また、小腸絨毛は、酵素産生細胞、血管とリンパ管、粘膜産生細胞で構成されます。
腸管には常在細菌があり、消化を手助けします。特に、母乳期に獲得されます。

大腸は水分を吸収するのが主で、未消化のものは便として排泄されます。
腸の長さは体長の約三倍です。分節運動により、食物をかき混ぜ、接触させ、小腸粘膜から栄養素を吸収させます。蠕動運動により食物を移動させます。
腸の病気とは、これらの腸構造、腸生理機能、腸運動に障害を受けたときに発症します。

腸への障害とは何か?
次回に説明していきます。

イヌの消化器系の病気について (口と歯について)消化器系

歯の機能について説明します。

切歯: 毛づくろいや、細かい剥離などをする。 上6本、下6本
犬歯: くわえたり、裂く行為をする。 上2本、下2本
前臼歯、後臼歯: ちぎる行為や、砕く行為。 前臼歯 上8本、下8本
後臼歯 上4本 下6本
人との違い: 歯根が人より深く、長い構造をしている。

歯は、生後約3週齢から乳歯が生え始めます。生後3ヶ月齢ぐらいから切歯から抜けはじめ歯根は溶解し、永久歯の生える容積をつくります。7ヶ月齢になり、永久歯が揃います。但し、後臼歯は乳歯がなく、6ヶ月ぐらいから生えてきます。

この過程で発症しやすい症例として、乳歯残存による障害です。
トイ犬種など歯根吸収が起きず、乳歯歯根が残ってしまい永久歯の生えるのを妨げ、歯が二重になり、不正咬合の原因となります。また歯垢も溜まり、口臭の原因にもなります。
口腔の症例について、継続してお話していきます。

イヌの消化器系の病気について (食道の症例について4)消化器系

食道の病的な現象として吐出があります。時間をかけて消化された食べ物を吐き出す嘔吐とは異なり、短時間に、嗚咽もなく食べ物を反射的に出してしまいます。
吐出と嘔吐をしっかり鑑別することで、食道疾患、もしくは胃疾患なのか、わかります。

急性の吐出しては、異物による完全閉塞。異物は通過、または排出したが、異物が食道壁に炎症を起こし、粘膜が肥厚して二次性の不完全閉塞を起こした場合。または食道炎。

慢性の吐出は、持続的に徐々に発症するもので、食道の拡張です。巨大食道症と言われます。筋肉無力症や、神経毒(ウイルス、細菌)が原因といわれます。

愛犬が、立位(四肢で立って)で頭から低い位置で自由に飲食できることに、飼い主はあまり気がつかないかも知れません。食道の筋肉壁は柔軟で、粘液を分泌し規則的な蠕動運動により胃に食物が送られます。重力に逆らって飲食してるようなものです。
よって、吐出は極めて犬として非生理的な現象なのです。

次回は、胃の症例についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (胃の症例について6)消化器系

胃の症例について:検査から診断できる症例について

まず、急性胃炎と慢性胃炎に分けられます。
症状として嘔吐がみられますが、主に、異物摂取や中毒、細菌、ウイルス、化学物質、食物過敏症などが原因ですが、急性、慢性の判断は嘔吐する期間にて判断します。長期にわたり継続する場合は、慢性と判断します。
診断は、レントゲン、超音波、血液検査、内視鏡、バリウム検査、試験開腹などです。

レントゲン検査
胃内異物の有無。(石や金属類は把握できますが、紙、繊維などはX線を透過するので捕捉できない。)ガスの貯留。(急性の胃拡張、胃捻転、胃閉塞などがわかる。)胃潰瘍。(胃の壁面の状態による。)
超音波検査
胃潰瘍。(ステロイド剤、抗炎症剤、肥満細胞腫、が原因。)
血液検査
白血球の数、種類により、胃炎の症状の進行度がわかります。(寄生虫や、食物アレルギーにより、白血球の好酸球数が上昇する。)
内視鏡検査
異物、肥満細胞腫による胃潰瘍、腫瘍、ポリープなどが確認できます。
バリウム検査
レントゲン撮影を併用することにより、X線を透過してしまう異物や、腫瘍の範囲、腫瘍、ポリープを確認できます。
試験開腹
いずれの検査でも診断がつかない場合。最終手段とします。

次回は下部消化器の腸についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (胃の症例について5)消化器系

胃の病気は、急性胃炎と慢性胃炎に分類できます。

急性胃炎の定義として、普段の様子から急変し、症状として短期間の間に嘔吐の頻度が多くなります。慢性胃炎は、その嘔吐する期間が継続し、長引く傾向になります。
胃炎は、嘔吐が主症状であり、愛犬家にとって、もっとも気がかりで、心配になる病気のひとつでもあります。また、犬にとっては、生体を守る最大の防御反応ともいえます。
摂取した異物、毒物、であれば嘔吐することにより、消化される以前に排泄されることになります。ただ、不完全なことが多く、動物医療により救済されるわけです。
嘔吐物により、病因が推測されます。形態、色、におい、未消化物の確認により、消化管の病変部が推測できます。また、胃液状、胆汁状の嘔吐により、上部消化管(胃より上)下部消化管(十二指腸以下)の病変か予測できます。

次回は嘔吐の原因として、胃疾患の症例を検討してみます。
また、嘔吐物は、胃炎診断の材料となりますので、動物病院に密閉して持参しましょう。

イヌの消化器系の病気について (咽喉の症例について4)消化器系

咽喉、すなわち体内に通じる消化器系の入り口について説明いたします。
解剖学上、呼吸器系の鼻咽頭と、分かれている部位でもあります。
咽喉の症例として、

咽頭炎(のどの腫れ) 呼吸器系から埃、排気ガス、煙、刺激性の強い揮発性ガスの侵入。細菌、ウイルスによる感染症により発熱、咳、くしゃみなどの症状を呈します。
都市部の産業道路幹線で飼育されていた愛犬では、咽頭炎を初期症状として、塵肺症様の症例が確認されたことがあります。また、気密性の高いガレージにいた愛犬が揮発性ガスを持続的に吸引して吐き気、過剰なよだれを起こし、痛みを伴う咽頭炎を発症した症例があります。
扁桃腺炎 咽頭や、呼吸器系の感染症の症状として扁桃腺が腫れます。発熱、食欲低下や、吐き気なども認められます。リンパ腫なども併発していることもあります。

治療について
非ステロイド系の消炎鎮痛剤や、抗生物質などを投与します。

次回は、食べ物の通過する食道についてお話します。